グロース株への投資判断指標まとめ

グロース株への投資判断指標まとめ

2020年11月15日最終更新

今回は成長著しいグロース株への投資判断をする基準についての記事になります。

伝統的には、企業の株価の割高感や割安感測る指標としてPERやPBRが用いられてきました。この2つの指標については、下記の記事で解説していますので、参考にしてみてください。

しかし、昨今流行りのテクノロジ関連企業、特にSaaS企業と呼ばれるセクターでは、この2つの指標は全く役に立っていないと言えます。

SaaS企業は利益が出ていない状態でも非常に早いスピードで成長するためです。なぜ、PERやPBRがあまり意味を持たないのか、それに変わる指標として何を利用すれば良いのかを考察したいと思います。

1.なぜPERやPBRではダメなのか

1.1.利益よりも成長速度を優先する風潮

昨今のインターネットを利用したビジネスでは、従来型のビジネスと比較してビジネス規模の拡大が圧倒的に早くなりました。

つまりはその分、競合他社との争いもより激しくなっています。そのため、会計上の利益をあげて決算を良く見せることよりも、研究開発や設備投資を積極的に行って製品の開発を加速させ、品質を早く向上させることにより、ユーザを獲得したり、広告などを出してマーケットシェアを獲得するといったことが企業が成長する上で重要な要素になっています。

そのためこれらに該当するSaaS企業などは成長の初期段階では利益を度外視しているのです。PERは利益に対して株価が割高か割安かを測る指標ですので、利益を度外視でビジネスをしている段階ではまともな値にはなりません。

1.2.純資産の低さ

利益をあまり出さないということは、会計上はその積み上げである純資産も増えません。そのため、純資産をベースに計算するPBRに関しても、グロース株の場合は大きな数値(割高)となることが多いです。

2.利益が出ていなくても良いのか

2000年代までは、インターネットビジネスをやる上でも、サーバなどのハードウェアやデータセンターを運用するための固定費がかかりました。

しかし、昨今のSaaS企業では、クラウド上にシステムを構築する場合も多いです。クラウドの利用料は会計上は費用ということで流動資産に分類されるため、B/S上で固定資産の割合が非常に小さく見えます。

そのため、純資産の割合が例え低かったとしてもB/S上では固定資産<純資産を維持できるため、健全な経営に見えます。

実際に、クラウド上のシステムは、不要になったクラウド上のリソースはすぐにでも廃止して課金を止めることが出来ます。また、新規サービスを立ち上げる際も、わざわざ巨大な資金を用意して博打のような初期投資を行う必要はありません。

このように、固定資産の少なさ、初期投資費用の少なさが、SaaS企業のような利益の少ない企業の成長を下支えしていることになります。

下記ではPERやPBRに変わるSaaS企業を評価するためのファンダメンタル指標についてまとめます。

3.PSR

3.1.概要

Price to Sales Ratio(株価売上高倍率)と言います。PSRは下記の式で表すことができます。

PSR = 企業の時価総額(株価×発行済株式数)/ 年間売上高

つまり、企業の価値を売上高の大きさを基準にしてその何倍かを表現したものとなります。

PERは企業の時価総額を利益で割った数値でしたので、赤字企業の場合などはPERを産出することができませんでした。しかし、PSRは売上高を基準としている指標のため、赤字企業だとしても数値が計算できます。

また、PERと同じで、PSRが高いほど株価は割高と判断されます。

伝統的な企業の考え方に従うと、企業は利益を出さなくてはなりませんから、PSRについては投資評価指標としては信頼度が低いという意見もみられます。

しかし、グロース株に投資する場合は、PERよりも僕はむしろ重視している指標です。

3.2.PSRの目安

ではPSRがどの程度だと割高で、どの程度だと割安か疑問に思うと思いますが、結論としては、何倍かで判断することは難しいです。

業界によってPSRが高くなりがちだったり、低くなりがちになったりするからです。PSRをさらに分解すると

PSR = PER(株価収益率)× EPS(1株当たり純利益)× 発行株式数 / 売上高

となります。分子である時価総額は結局のところ利益や利益成長可能性などが影響します。

SaaS企業を含めた、テクノロジ関連企業の利益率は最終的には高くなる傾向にあります。そのため、EPSも高くなりやすく(そもそもPERも高い傾向にありますが)PSRは他の業界よりも高く見えても適性であることが多いです。

一方で利益率が低い業界ではPSRは低くなりがちです。この辺りはPERの仕組みと同じかと思います。

2.EBITDA(イービットディーエー)

2.1.概要

次はEBITDAについて説明します。EBITDAは、Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの頭文字をとった略字です。それぞれ日本語に直すと下記の通りになります。

Earnings Before Interest Taxes:利払い前・税引き前利益、金利・税金
Depreciation:土地や建物など有形固定資産の減価償却費
Amortization:のれんやソフトウェアなど無形固定資産の減価償却費

EBITDAとは利払い前・税引き前利益、減価償却の合計で求められる利益で下記で表すことができます。

EBITDA = 利払い前・税引き前利益(=営業利益) + 減価償却費

EBITDAは営業利益に非キャッシュ費用である減価償却費を足し戻したものであることから、営業キャッシュ・フローに近いものと捉えることができます。

2.2.EBITDAのメリット

2.2.1.基準が統一できる

税引き後の利益を利用した場合、利益から引かれることになる金利や税率は国によって大きく異なります。また、減価償却費の計算の仕方についても定額法や定率法のどちらを採るかなどによって算出方法が変わってしまいます。

EBITDAにはこういった要素が含まれていないため、グローバルに事業を展開している企業などの金利水準、税率差、会計基準などの差異要因を排除して競合他社との収益性を比較・分析することが出来ます。

2.2.2.純粋な収益性を見ることができる

また、設備投資などを積極的に行っているグロース企業は売上高の低い段階では特に、設備投資の減価償却負担により赤字になる場合があります。また、年度毎に設備投資額が変動する場合は、減価償却費が変わってくるため、利益のブレの要因になります。

このような減価償却費の影響を排除し、純粋に本業での利益が順調に成長しているかどうかを評価するという目的でも利用することが出来ます。

ただし、本当に投資段階で、収益を度外視しているフェーズの企業では、EBITDAでみても利益が出ていないということは多々あります。

3.EV/EBITDA

EBITDAは純利益よりもより企業の成長性を純粋に測ることができますが、現在の株価の割高/割安を示すことはできません。

そこで企業価値を評価する指標としてEV(企業価値)/EBITDA比率を利用します。式を見るとわかるように、EVがEBITDAの何倍(何年分)かを示します。

4.売上成長率

現時点での売上高を考えることも大切ですが、企業がグロースしている状態では売上成長率が非常に重視されます。企業の規模が大きくなればなるほど高い売上成長率を維持することは難しくなるため、売上が上がっている過程で、その売上成長率を維持できているのか、それともだんだん成長率が落ちているビジネスモデルなのかを見極める必要があります。

  • 毎年売上高が成長しているか
  • しなかった場合その理由は何か、一時的なものか
  • 売上成長率の伸びはどうか

などを気にする必要があります。SaaS関連企業の場合、課金モデルとしてサブスクリプション型を採用することが多く、安定的な売上高の成長を見込むことができます。

サブスクリプション型ビジネスのKPIなどについては下記で記事にしているので是非参考にしてみてください。

5.40%ルール

SaaSの40%ルールとは、テクノロジーに特化したグローバルなベンチャーキャピタル「Battery Ventures」が2015年に提唱したSaaS企業への投資をするかどうかの指標の一つです。こちらが元の記事になります。

40%ルールは下記の式で表され

「売上高(MRR)の成長率」+「営業利益率(もしくはEBITDA)」

この値が40%を超えるかどうかという考え方です。グロース株が営業利益を出せない理由は、翌年以降の売上高を伸ばすための積極投資を行っているからです。

40%ルールは高い売上成長率があれば、営業利益率は低いもしくはマイナスでも許容するし、逆に、売上成長率が対して高くないのに営業利益が出ていない場合は評価を下げるという指標になります。具体的な例としては下記になります。

  • 売上高成長率が60%の場合:営業利益率が−20%以上
  • 売上高成長率が40%の場合:営業利益率が0%以上
  • 売上高成長率が20%の場合:営業利益率が20%以上

非常に重要な指標ではあるものの、実際には優良な企業でも40%に満たないこともあるので、僕の場合はこの値が高ければ良いという参考に用いています。

6.PSRと40%ルール

40%ルールはSaaS企業が成長しているかどうか、利益が例え出なくてもわかる一つの指標でしたが、これだけでは、市場価値と比較して打倒かどうかを評価することが出来ません。

ここからは僕が利用しているオリジナルの計算方法なので参考程度で読んでいただければと思います。

PSRのこの40%ルール根を計算することで、各企業の評価が割高であるかを評価します。計算式としては下記となります。

過大評価指数 = PSR^(1/(1+「売上高成長率」+「営業利益率」))

この「過大評価指数」が大きいほど株価が割高、小さいほど割安であると言えます。

PSRが高い数字(現状の売上高よりも時価総額が大きい)だったとしても40%ルールの数値が高ければ、「過大評価指数」は小さくなります。

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